カントリー・ロード
金曜ロードショーのジブリはCM入るからいやよねー、と思っていたのに「耳をすませば」を見てしまった。
15歳の、不器用でシャイなくせに素直で一直線な王子様男子。俗っぽい所もありつつ、負けず嫌いで、才能の上で好きな男の子と対等でありたいともがく女の子。
自分の中に、15歳にものすごく共感する気持ちがあるのに、15歳が心に棲んでいるのに、もう15歳の子供がいてもおかしくないし、なんなら子供が二十歳でもおかしくない年齢になっている。恐ろしい…。今でも聖司くんは私の王子様なのに。
人生の節目節目にジブリを見てきたなあ、としみじみ思う。
以前に転職活動をして、仕事がなかなか見つからなかった時は泣きながら仙台に来て、友達の家で「ハウルの動く城」を見て泣いていた。
今は仙台に住んで「耳をすませば」を見ている。
小さかった弟たちとトトロごっこもしたし、高校中退した弟が「耳をすませば」を繰り返し見ては「人と違った生き方はそれなりにしんどいぞ」というセリフに胸を打たれたとポツリと言っていたことを思い出したりもする。
何より多摩丘陵からの景色が懐かしかった。
主人公の雫がカントリー・ロードの歌詞を書いた時、「故郷って何か、やっぱり分からないから、正直に自分の気持ちで書いたの。」と言っていた。
今まで「故郷って何か」私もわからなかった。
でも今回、関東を離れて「耳をすませば」を見たら、「ああ、多摩丘陵が私の故郷なんだな」と思った。
多摩川、京王線、京王百貨店、遠くに見える新宿副都心。この丘陵のもう少し南側に行ったら私の街だ、と探すような気持ちで見た。
帰りたくて帰れない場所でもない、今はまだ帰りたいとも思わない。だけど一番安心する景色。
自分にとって一番「当たり前」の「なんでもない」風景。
特別なものは何もない場所に、思い出だけがたくさん積もっている、それが「故郷」なんだろうな。
見守る
昔のドモホルンリンクルのCMはすごく印象的だった。
コラーゲンを一滴一滴見守るのだ。あの頃、「見守る仕事したいーー」なんてみんなで話したものだった。
しかし、見守るというのはなかなか簡単なことではない。
今にして思えば、ドモホルンリンクルの見守る仕事なんて、5分で眠りについてしまうだろうし、3日位で「もう目が痛いし退屈だし苦痛でしかない」と退職を願い出るのではないかと思う。
例えば子供や猫の成長をそっと見守るのだって楽じゃないだろう。あれこれ口を出したくもなるだろうし、「猫め!かわいいなあ!!」とちょっかいを出したくもなる。
植物の成長だって、じっと見守りつつも、水をやりすぎたり、あれこれ気にしすぎたりすることもある。
これが「黙って見守る」ということか、と初めて実感したのは、実家がルンバを買ったときだった。
私はただただ、あの子が働くのを見ていた。そばをついて歩いたりはしたけれど、手出しも口出しも一切しなかった。あの子が壁ぎわで行き詰まってくるくる回っていても「あらあら」と笑いながら見守ったし、私の思った通りのそうじではなく、ビリヤードのような対角線コースを通ったとしても「好きにおやりなさい」と見ていた。
孫を見守る老人のようだな、と我ながら思った。
今日、私はまたしてもきちんと「見守る」ことができた。
初めてのジェルボール洗剤を使っての洗濯。きちんとジェルボールが溶けるのか、きちんと洗濯がされているのか。
洗濯機の前でただただ見つめ続けた。
仙台は今日から2週間くらいずっと天気予報が雨マークだ。それで同僚おすすめの部屋干し用アリエールを買ったのだ。
「アリエール、いいですよ、臭くならない。ジェルボール使ったことないんですか?なんなら明日、二粒くらい持ってきましょうか」
同僚はそう言ってくれた。優しいな。でも大丈夫、ちゃんと自分で買うから。
会社帰りにアリエールを買って、早速洗濯してみた。初めてのジェルボールは思ったよりもぶよぶよだった。良かった、同僚に持ってきてもらわなくて。カバンの中で破裂させてしまうかもしれなかった。
この洗剤、最初に空っぽの洗濯機に放り込んで、ある程度水を注いでから洗濯物を入れるらしい。うっかり、後入れにしてしまったこともあり、ちゃんと溶けるのか見守ることにしたのだ。
洗濯物がすべて水に浸かっていないのが気になっても手は出さなかった。洗濯機が手を変え品を変え、水流を変え、回転を変え、あれこれと試すうちにすべての洗濯物が水に浸かり、上下が反転したりする様をただずっと見ていた。
夕飯も食べずに。
まあ、要はヒマなんだな。
新参者なりに
仙台育英学園の全国制覇から一夜明け、今日の河北新報朝刊です!
— 河北新報出版センター (@kahoku_books) 2022年8月23日
昨日の感動再び!改めて喜びをかみしめてます!育英ナイン本当におめでとうございます!
#甲子園#高校野球#仙台育英 pic.twitter.com/1C3LYt34hh
会社に毎朝新聞がたくさん届くが、今朝の河北新報の2面抜きには驚いた。
文字のデカさよ。
こんなデカい文字を新聞で見たのは、震災の時以来だ。
日経新聞やらが落ち着いている中、河北新報はデイリースポーツ並の喜び爆発だ。
そしてそんな河北新報を最初に見せられたのは出勤前の更衣室だ。
同僚の子が「昨日、育英勝ちましたねー、今朝の河北、こんなですよーー」と写真を見せてくれたのだ。
野球友達のくまちゃんは「地元紙はさすがですよねー」と嬉しそうだった。
もちろん始業時の朝礼も育英の話だ。
お昼の休憩室で流れるテレビも仙台育英。
そして、昨日から私もあれこれニュースをはしごしたり、特番を録画したりしている。
OBコメント、大越基や佐藤世那、そして由規が出てきて懐かしさにうわーーー!となった。
懐かしいな。彼が仙台育英のエースとして甲子園に出場していた2006年、2007年は、「輝け甲子園の星」という雑誌も買っていたし、熱闘甲子園も毎日録画して見ていた。あの頃の由規は泣き虫かつロマンチストで、熱闘甲子園の中で、兄弟でギターを弾きながら歌っているシーンもあった気がする。
元気だったのか、由規。顔、変わらないな。
田中マーくんや、吉田輝星、各球団の育英OB、大魔神佐々木やサンドウィッチマンのコメントなんかも紹介される中にさとう宗幸のコメントも並んでいた。
…やっぱり奴ははずせないんだな。
正直、仙台に来るまで私はさとう宗幸の顔を知らなかった。しかし最近識別できるようになってしまった。
関東にいたときは「昔、青葉城恋唄がヒットしたおじいさん。もう芸能界は引退」くらいのイメージだったのに、仙台に来たら宗幸を見ない日がないほどだ。
まさかこんなに売れっ子だとは。
職場の同僚に「私ね、仙台のテレビはサンドウィッチマンばっかり出てると思ってたんですよ。でも実際はさとう宗幸ばっかりですね」と言ったら、同僚はものすごいいい笑顔で「あ!確かにさとう宗幸は多いけど、一番多いのは本間ちゃん!!」と仰る。
誰だよ…、本間ちゃん。
まだまだ本間ちゃんを見たこともない新参者だが、そんな私も仙台市民の一人として、夕方のNHK「てれまさむね」で育英特集見たわ。
その後の、東北限定の「仙台育英優勝特番」も見たわ。
雑誌Numberの甲子園特集と今年の甲子園Heroesもちゃんと買うわ。
なるべく秋季大会もチェックするわ。会社の河北新報、残ってたらもらって帰りたいわ。
白河の関
ついに、ついに、真紅の大優勝旗が白河の関を越える時が来たのだなあ。
それが、自分が仙台にやってきたタイミングだなんてなんだかしみじみだ。
夕方からはニュースをあれこれ見たが、さすが地元の放送局の取材力よ。
どこのチャンネルを回しても、生徒なり、OBなり、父兄なりが出てきてなにか喋っている。そして仙台駅前、アーケード、学校の様子から、パブリックビューイングの様子まで映し出される。
一番驚いたのは、白河の関に高齢者が集ってパブリックビューイングをしていたところだ。何もそんな山奥みたいなところで…。
すごいな。
そしてSNSなどを見ていると「育英の勝利は東北の勝利」「東北民として応援しています」みたいなコメントが多かった。
こっちに来てから思うけれど、東北の人たちの東北愛、東北6県の連帯感、熱さがなんかすごい。職場にも「東北全図」という地図が貼られている。
会社の近くにある河北新報社のビルも壁にタイルで大きく東北の図が描かれている。
関東だったらこういうことはないと思う。だいたい、関東だけバーンと描かれた図があっても、それが関東なのかアメーバなのか理解できなそう。首都圏だけの地図ならまだしも、関東全図なんて見たこともない気がする。
何より「千葉の勝利は関東の勝利」「関東代表として群馬に頑張って欲しい」というような気持ちは皆無だ。関西だってきっと大阪、京都、奈良でそんな連帯感はなさそうだ。東北のこの連帯感はどこから来ているんだろうな。
何はともあれ、仙台育英学園高校、優勝おめでとう。歴史的な瞬間を見せてくれてどうもありがとう。
そして地元愛の強い仙台の友人たち、東北の方々、おめでとうございます。
しばらくは大騒ぎなのかしら。パレードもあったりするかしら。楽しみだな。
優駿
仙台での暮らしの中で時々、学生時代に住んでいた埼玉の田舎町を思い出すことがある。
狭山茶の栽培が盛んな町で、起伏のある土地に広大な茶畑が広がっていて、冬になると夜中でも霜警報のサイレンが響いた。
そして、免許を取り立ての友人の軽自動車で夜中の茶畑の農道を爆走したりした。
あの町に引っ越したばかりの頃、学校帰りに友人と歩いていたら、後ろからカポカポと音がして、振り向くと馬が居たことがあった。
近所に乗馬クラブがあるせいだったのだけど、本当に驚いた。
馬!生の馬が!!普通に道路を歩いている!!と。
昨日、友人鮭太郎の車で海沿いを走っていたら、鮭太郎が「あ!そうだここ寄ろう。馬が見れるんだよ」と車を停めた。
…馬。
確かに「馬見れます」「入場無料」とデカデカと書いてある。
馬か…。本当にあの埼玉の町とちょっと似てるな。埼玉より平らで海があるけど。
「馬術馬場」とか「練習馬場」とか書いてある。
馬場と言ったら高田馬場かジャイアント馬場くらいしか馴染みがなかったが、馬を走らせる場所=馬場だよな。そりゃそうだよな。
乗馬クラブの生徒さんなのか先生なのかわからないが、みんなおしゃれな乗馬ウェアを着て、そして足が細い。乗馬って脚痩せ効果あるのかしら。いいわね。
厩舎を見学していると「馬出まーーーす」とガンダムのごとく馬が出ていく。デカい。そして馬の足の細さ、美しさよ。
なんでも元競走馬とからしく、父は誰、母は誰、と由緒正しい血統なども書かれていて、競馬に詳しくない私でも聞いたことのある名前の父親がいたりする。すごいな、サラブレッドって。
汗を飛び散らせながらぐるぐると走る馬。
学生時代、競馬好きだった恋人に連れられて、何度か中山競馬場に競馬を見に行ったことがある。
初めて見たのは確か朝日杯というレースで、グラスワンダーという馬が勝ったのだ。目の前をすごい地響きで馬が駆けていくことと、周りの人達の熱狂に呆然としながら見ていた。
ああ、馬ってやっぱり綺麗な生き物だな。
また競馬場かどこかでたくさんの馬がドドドドドと走るところが見たいなあ。あの迫力を感じたいなあ。
…と思っていたが、帰宅したところ、我が家の2匹の猫がドドドドドと馬の如く家中を大疾走し始め、2度ほど踏まれたので、もう願いは叶えられたようなものね。
馬が駆け回るような迫力を自宅で感じることができるのだ。そう、猫がいればね。