腹をくくる
NHK BSプレミアム 12/7放送
アナザーストーリーズ「そのとき歌舞伎は世界を席巻した 〜十八代目 中村勘三郎の挑戦〜」
【いまを生きる人に届く演劇に】
— NHK広報局 (@NHK_PR) 2021年12月6日
そう願って、歌舞伎の新たな形をつくった十八代目中村勘三郎の過程と苦難。そして“創造的破壊”を。
出演:
野田秀樹、大竹しのぶ、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東玉三郎
アナザーストーリーズ
7(火)夜9:00[BSプレミアム]https://t.co/WqBPNovYhL pic.twitter.com/9Lic8OBnZ9
www.nhk.jp
歌舞伎役者でも噺家でも魚屋でも寿司屋でも、あの「○代目吉田○右衛門」みたいなのはなんなのだ、と子供の頃から思っていたが、ある日「その名前を引き継ぐことで、財産も客も借金もすべて引き継ぐのだ」と聞いて腑に落ちた。
なるほどな、何代目だろうが、ここは吉田○右衛門の家や店で、吉田○右衛門に貸した借金は、作った本人が死んでも次の代の人間が引き継ぐし、お客もずっとついていくのだな。結構合理的なシステムだな、と感心した。
合理的だけれど、職業選択の自由はない。
昔、なぜだか祖母や母がしょっちゅう「歌舞伎の家は大変なんだ、男の子を産まないといけないし、生まれた男の子は小さな頃から厳しいお稽古を積んで、絶対に歌舞伎役者にならなければいけないんだ」などと話しており、子供心に「そんなことある?そんなの逃げるしかないじゃん」と思った。しかし逃げずに引き受けているから今日も歌舞伎が続いているのだろう。
以前にNHKで尾上菊之助の歌舞伎「風の谷のナウシカ」の製作を追ったドキュメンタリーを見た。
あの時にしみじみ感心したのは「歌舞伎の名門の家柄に生まれた人は、『継続』と『生み出す』という役割を背負わなければいけないんだな」ということだ。
そこに生まれれば御曹司と言われ、いい役を与えられ、人から可愛がられ、子供の時からスターダム。
けれど伝統芸能という枠があり、そこに家柄の責任もある。役者の名前にかかる期待値もある。その上、この伝統芸能を継続させ、新たな価値も生み出し、若手も育てていくのか。ちょっと並大抵のことじゃないな。
プロ野球選手の息子なら「お父さんは天才だったけど、息子はちょっとね」ということで早々に引退してタレントや解説者やコーチになったりもできるだろうが、歌舞伎の家に生まれたら、万が一才能がなかったとしても「父のような才能がないからごめんなさい」では済まないんだろう。
才能があろうがなかろうが、どうにかこうにか背負っていかなければいけないものがきっとあるんだろう。
そう思うと、この人達は一体どこで覚悟を決めたのかと思う。
歌舞伎の家に生まれて子供の頃から歌舞伎に親しんでいたって「作家になりたい」とか「レーサーになりたい」と思ったことだってあるだろう。
どこでどう折り合いをつけて腹をくくったんだろうか。
何の職業にせよ、腹をくくった人って、すごい。
どれだけ年をとっても、いつもそういう人を見て、すごいすごいと感心してばかりだな。