ぬくぬく
弟が山芋を持ってやってきた。
弟の知人が北海道の農協で働いているそうで、毎年送ってくれるのだそうだ。
それを私がいつもおすそ分けしてもらっている。
毎年、この時期山芋をもらっては子供の頃に読んだ絵本を思い出す。
「ぬくぬく」という妖怪の話だ。体中に藁をまきつけ、腰に山芋を下げて「ぬくぬく、ぬくぬく」と言いながら歩く寒がりの妖怪だ。梶山俊夫の絵がまたシュールなのだ。
シュール過ぎて忘れられず、無性に読み返したくなって数年前に購入したが、久々に読んだら、こんなにもはっきり内容を覚えていたことに驚いた。
そしてまた大人になって読むと、じわじわと心に沁みてくる話なのだ。
一人で生きている大人なんてみんな寒がりの妖怪みたいなものだろう。
山芋を持って、小さな子どもを連れて弟夫婦がやってきて、体温の高い子供の手を握り、「よいお年を」と言い合って別れたら、寒さを忘れた妖怪のような心持ちになる。
とりあえずは千切りにしてポン酢で食べる。
さてさて、あとは何を作ろうかね。ぬくぬく、ぬくぬく。