そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

ウエスト・サイド・ストーリー


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スピルバーグウェスト・サイド・ストーリーを見てきた。
久々に映画館であそこまで泣いた。心の中のコップがいっぱいでちょっと揺らしたら水がこぼれるくらいの気持ちになった。


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親たちの世代がため息をつきながら見ていた1961年のウェスト・サイド・ストーリーは確かに感動したけどちょっと古いもの、自分とは違う時代のものに見えたし、舞台版のウェスト・サイド・ストーリーも1961年の映画に忠実で古臭く見えた。
だけど、今回のスピルバーグ版は映像も美しく、「自分の時代の作品」だと思えた。


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移民、肌の色、経済格差、貧困、スラム。
1960年代に世の中の経済成長の影で追いやられようとする人々の生きた現実は、2000年代の今、世の中がもがきながら衰退していく予兆の中、私達が生きている世界と同じく歪んでいる。
多様性!と声高に叫ばなければならないほど、生き抜くために仲間内で固まりたくなっていて、異質なものを排除したくなっていて、生きることが攻撃的になってきている今と。


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男たちの戦うシーンやダンスシーンの迫力に、鬱屈したエネルギーを感じる。
ギリギリでなんとか生きている、人に蔑まれながら、居場所も奪われそうになりながら、先の見えない暮らしの中で、仲間たちの繋がりを強固にすることにすがって。
様々な場面でリフの表情が、すごくいい。トニーが「リフの人生には苦労しかない」と言っていた。


音楽はあの頃も今もずっと変わらずに美しい。


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アメリカ」の中で、女達は今生きる場所に希望を持とうと踊り、男たちは異国の地で虐げられている現実を歌う。
「体育館のダンス」では女達はただ恋人と踊ることを望み、男たちは戦争を始めるきっかけを探している。
そんな中で出会ってしまう若い男女の愛は、怖いもの知らずのまっすぐな激しさだ。


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二人のまっすぐな愛情にも胸を打たれるが、自分の年齢的に見守る大人たちの立場にも胸が苦しくなってしまう。
自分も白人と結婚したプエルトリカンだから、裏切り者と罵られたりもしたから、ハラハラしながらトニーとマリアを見守るバレンティーナ。
ちょっと前まで「サムウェア」はそんなに好きな曲じゃなかったのに、やっとわかった気がした。心に沁みて嗚咽した。
少年の諍いに頭を抱え、イヤミな発言をしている警察の面々も、なんだかんだ、少年たちを心配していた。


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そしてやっぱり何よりアニタだ。
アニタだってまだ若い。恋人に甘える若い女性の顔、生活を支える母のような顔、マリアを守る保護者の顔とを持って、大人と娘との間を行き来する、この根性の座った女は本当にすごい。
自分の恋人が殺されたその日、自分の恋人を殺した相手と、自分の妹のような存在が愛し合っていることを知る。そしてマリアの愛を認めてやる。
生活力があり、美しく、強く、優しく、そして哀しくて、人間らしくて最高にカッコいい。


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あと何回か見に行きたい。
IMAXで見たら画面が大きすぎて目が回ったので普通の画面でも見たい。
サントラも欲しい。
一部ではあまり評判が良くないみたいだけれど、私は本当に感動した。
このコロナ禍に、こんな映画を作ってくれてスピルバーグにありがとう、と思った。