そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

PERFECT

―ハンスはお前に相応しくない。魂の狭い平凡な男だから


いいえ、愛する値打ちのある男。
それは平凡で、特に目立った所がなくて、話しぶりや癖も他の男たちと同じような人。
ただ違うのは、他人より欠点が多くて、よくへまをやるってこと。

          ジャン・ジロドゥ「オンディーヌ」


猫と暮らしていると、服やらシーツやら枕カバーにしょっちゅう穴があく。あの方々が愛のままにワガママに爪を立てて抱きついたり踏みつけたりするせいだ。
仕方ないので夜な夜な繕う。おかげで我が家の枕カバーやシーツは人から見たら大変みすぼらしいことだろう。

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こんなぐるぐるがあちこちにあるのだ。


ヒートテックインナーにも、靴下にもジーンズの裾にも継ぎがあたっている。
あーあーあー…と思いながら、私は密かに気に入っているのだ。「仕方ないわねえ」と言いながらこのボロい枕カバーやシーツを愛しているのだ。


猫のイタズラだってそうだ。「ホンットにバカだね!」と叱りながら呆れながら、でもそんなバカな所が好きなのだ。ふてぶてしい顔でいびきをかきながら寝ている姿、引き出しや開き戸を勝手に開けてイタズラをする予想外の賢さを愛している。

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おかしな寝相とか。


15年くらい前に旅先で買ったご飯茶碗、洗う時にうっかり手を滑らせてヒビが入ってしまい落ち込んでいたが、父が意気揚々と「俺が金継ぎしてやるよ!」と言うのでお願いした。金継ぎやってみたかったみたいだ。


それで戻ってきた茶碗を、前よりももっと好きになった。糸底も少し欠けてきて、そろそろ買い替えようと思うのだけど、気に入った茶碗がなかなかみつからない。なぜなら「気に入った茶碗」とは「うちの茶碗」だからだ。



10年くらい前に買ったカシオのBaby-Gは軽くて丈夫で、ソーラー電池で、2つの国の時間が確認できて、山歩きするときや旅行に行くときにとても便利に使っていた。


コロナ渦で旅行にも行けずに放置してしまったら、さすがに電池も弱って動かなくなった。
同じデザインの後継機も出てるし、すごく高い時計という訳でもないし、買い替えようかとも思ったけれど、カシオに修理に出した。
電池交換と点検修理、送料込みで約4000円。元気になって今日戻って来た。



元気になった時計に同梱されていた修理報告書を読んでいたら、なんだかしみじみとした愛情が胸の奥に湧いてきた。


高い時計でもないのに、10年近く経っているのに、ちゃんと直してくれてどうもありがとうカシオ。
かつて「日本製は安くて壊れにくい」と言われた、その評価そのままに元気に動いてくれてありがとう、Baby-G。
思い起こせば、いろんな所に一緒に行ったわね。
野球も見た、ラグビーも見に行った、ベトナムにもスペインにも上海にも行ったね。山に登ったり、雨に降られたり、福島で星を見たり。
よくぞ今までも今日これからも元気でいてくれた。


新品と比べたらもう色あせて、ボロくなって、傷がついたり、継ぎがあたったり、欠けたり、黒ずんだり、カッコわるかったり、へまをしたり。
そんな欠点があるからこそ、私にとって完璧で、愛する値打ちのある、愛すべき存在たち。
だって一緒に生きてきたから。これからも一緒に生きていくから。



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