そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

火中の栗

NHKの子供向け番組に「昔話法廷」というものがある。
おそらく裁判員制度が始まったことで、子どもたちに裁判員について教えなければという目的によって作られたのだと思うが、昔話を題材にして主人公たちが裁判にかけられるのだ。


この番組を初めて見たのは旅先だった。
お盆に友達と旅行で志賀高原に行って、朝、チェックアウトをしようとしたらテレビでこの番組が始まって、友人と二人、目が離せずに最後まで見てしまったのだ。

懐かしのカニグラタンみたいな蟹。


小林聡美が演じる弁護士の厳しさもいい。小澤征悦もいい。
話の内容はやたらリアルでシリアスなくせに、学ランを着た蟹や猿夫妻のシュールさにじわじわやられる。



そもそも「さるかに合戦」の物語自体、シュール極まりなく、私は子供の頃からものすごく不思議だった。
だいたい「合戦」というより仇討ちなのだ。
木の上から青く硬い柿を投げつけ、蟹の母子を殺した猿が、生き残った子蟹に復讐される。


その復讐の仲間からしておかしい。

子蟹達は親の敵を討つために、猿の意地悪に困っていた栗と臼と蜂と牛糞を家に呼び寄せて敵討ちを計画する。
猿の留守中に家へ忍び寄り、栗は囲炉裏の中に隠れ、蜂は水桶の中に隠れ、牛糞は土間に隠れ、臼は屋根に隠れた。
そして猿が家に戻って来て囲炉裏で身体を暖めようとすると、熱々に焼けた栗が体当たりをして猿は火傷を負い、急いで水で冷やそうと水桶に近づくと今度は蜂に刺され、吃驚して家から逃げようとした際に、出入口で待っていた牛の糞に滑り転倒する。
最後に屋根から落ちてきた臼に潰されて猿は死に、子蟹達は見事に親の敵を討ったのだった。
                Wikipediaより


猿と蟹という生き物の戦いに臼と牛糞という非生物が介入してくる。
猿の意地悪に困っていたことが理由だと言うが、猿は臼と牛糞に対しどんな悪事を働いたのだろうか。
栗は安定の働きだ。アツアツに焼けた栗の体当たりだ。正に火中の栗!



こんな昔話に出てくるくらいだから、日本の故事成語、あるいは中国から伝来したに違いない、と私は思っていた。


そんな「火中の栗」が今日の中国語オンラインレッスンに出てきた。
火中取栗
先生は「成語です」と言っていた。
そうでしょう、そうでしょうね。日本語でも「火中の栗」って言いますよ、きっと中国から伝わったんですね、と私は言おうと思っていた。言えなかったけど。


しかし、コトバンクにはこう書いてあった。

[由来] 一七世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの「寓話」によって知られる、「猿と猫」という話から。


え、火中の栗ってフランス産なの?
甘栗でも、日本の焼き栗でもなくて、おフランスのマロン・ショーでございますの?


そうだったのか。火中の栗はフランス渡りの戦法か。やるな子蟹軍団。
牛糞や臼が仲間になるのも、きっと何かしら深い理由があるんだろう。牛糞なんてインドの戦法かもしれない。


昔話の上では猿は臼にとどめを刺されて死んだことになっているが、「昔話法廷」では子蟹が猿を殺しきれなかったという設定だった。なぜなら、壁に貼られていた「子猿が描いた家族の絵」を見てしまって動揺したから。
リアルだな。


でも火中の栗作戦等で、ある程度リベンジしてるなら、死刑はちょっとね…と思わなくもないです、私が裁判員ならね。