クラムボンはわらったよ
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』
小学校高学年でこの物語が教科書に出てきて、男子は日がな「クラムボン」「クラムボン」と言っていたっけ。シュールで美しい物語。
この物語の終盤では、川の中に落ちてきたやまなしを父蟹と二匹の子蟹が追いかけていく。そして父はやまなしが発酵して酒になるのを楽しみに待つのだ。
『どうだ、やっぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだろう。』
『おいしそうだね、お父さん』
『待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰って寝よう、おいで』
親子の蟹は三疋自分等の穴に帰って行きます。
波はいよいよ青じろい焔をゆらゆらとあげました、それは又金剛石の粉をはいているようでした。
宮沢賢治らしく幻想的で情景が目の前に浮かぶような文章だが、「蟹も大人になると酒を飲むのだなあ」としみじみしたものだった。
そんなことを思い出したのはネットニュースで、発酵した梨を食べたリスの酔っ払い動画を見たせいだ。
こいつ、相当キマって腰抜かしてるな。
そして梨とはかくも発酵しやすく酒になりやすい果物なのだなあ。
やし酒飲みもびっくりだろう。
さて、明日はやまなしの端っこの山にハイキングに行く。
きっと歩きながらずっと心の中で「クラムボンはわらったよ」と唱えてしまうだろう。
なにせ今日久々に思い出してしまったから。
それにしても蟹率の高いブログになってきたな。