そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

知らないはずの味

子供の頃からずっとひそかに不思議だった。
バナナ味のお菓子は味も匂いもバナナとは違う。なのに、なぜあれをバナナ味だとみんなが思うんだろう。

青春のメモリー いちごオレ


いちごオレだって、いちご味のお菓子だってそうだ。果物のいちごとは明確に違う。でもいちご味といったらあれなのだ。


海外ドラマを見ているとたまに味に対してユニークな表現があったりする。
「うん、靴底を2時間煮込んだならこういう味になるだろうな」とか「猫のゲロみたいな味だな」とか。
一体、どこからそんな表現をあの人たちは見つけてきたんだろうか。
靴底も猫のゲロも食べたことないはずなのに。その想像力がすごい。



さて、来週には仙台に引っ越すが、仙台はやたらホヤ推しの街だ。
うみの杜水族館ではホヤの一生が展示されているし、子供用プールでホヤのつかみどりもできる。スーパーでもホヤがわんさと売られている。あれはどうやって調理するのだろうか。
一度友人に「仙台来たんだからホヤ食べてみてー」と言われ、食べてみたが、なんだかとても不思議な味だった。


「墨汁の味がする」
と私が言うと、友人は不思議な顔をした。
そりゃあそうだろう、墨汁飲んだことなんてないもんな。私もない。でもあれは確かに墨汁なんだよな。

プリケツをこちらに向けて食事する猫


今日は不用品回収が来てくれて、絨毯も持っていってくれたので畳の上での生活になった。
畳の匂いを嗅ぐといつも自分の失言を思い出す。


友人まるこの家で、箱根駅伝を見た日、まるこが出してくれたお茶に、私は無邪気そのもので言ったのだ。
「まるこ、これ何のお茶?畳の味がするね」


なんのことはない、一人暮らしのまるこが放置しすぎて古くなった茶葉で淹れたお茶なのだ。
「あ、茶葉が古かった、すみません」と片付けたまるこに、私は恐縮しきりだったが、まるこは大爆笑し、その後何度も何度もあの時の話をする。
「全然失礼とかそういうのじゃなくて、”畳の味”って表現が面白かったんです。面白すぎて母にも言いました。いやー、畳の味ね!なんかわかる気もします。」


すまない、まるこ、すまない。
私も別に畳を舐めたことがあるわけじゃないんだけど、どうしても「あ!畳」と思ってしまったのだ。


なーんで、知らない味を知ってる味みたいに思ってしまうのかなー。
と、調べてみたら、嗅覚も味の一部なんだそうだ。
gendai.ismedia.jp

味覚と味は別物であり、“舌から入ってくる情報”である“味覚”と“鼻から入ってくる情報”である“嗅覚”を合わせて私たちは『味』を感じているのです


なるほど、それじゃあ、ホヤを墨汁の味だと思っても、古い茶葉を畳の味だと思っても別に間違いじゃないんだな。
でもお菓子のバナナとかいちごは匂いも含めてやっぱちょっと違うよな…。


なんてことを考えながら畳の上で足をバタバタさせる。
「海の家みたいだ」とか思いながら。