そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

そのへん

関東で3年ほど育てていたぬか床が、引っ越しで無理をさせたせいか、はたまた仙台の湿度に合わなかったのか、ダメになってしまった。
それで全部処分した。



以前の記事でも書いたが、この「米の国」ではスーパーや市場に並ぶ「ご飯の友」がやたら充実している。漬物、佃煮、珍味、あれこれ。
見たことのない漬物もたくさんある。
なので、しばらくぬか漬けを休んでも、ご飯の友には困らないかなあ、と思っている。


関東にいた頃、東北から来た同僚たちの言葉によく驚いたものだった。
いわく「冬の間は雪で買い物にいけないこともあるので、ご飯と漬物だけ」
「雪の下に埋めておいた野菜を出してきて食べる」
「夏のバイトは尾花沢スイカにシールを貼る仕事」


山形から来たごっさんが当たり前のように言った漬物石の話にも驚いた。
「漬物石なんてどこの家にもあるじゃないですか!」
…いや、ないが?
「じゃあ、河原で拾ってきたらいいんですよ」
河原!!どこの?


そんな話を懐かしく思い出して仙台の友人・鮭太郎に伝えると、鮭太郎も「そう!河原よ!」と言う。「うちにも河原から拾ってきた漬物石あるよ」とのこと。
なんなの、人は広瀬川で漬物石を手に入れるものなの?そのへんに普通にあるものなの?




さて、8月は仙台市内のボタニカルガーデンや、農業園芸センターに連れて行ってもらった。この辺の人々はちょっと土地があったら、米なりなんなり植えたくなる性質のようだ。
国道脇の小さな三角形の空き地にも米が植えられているし、米じゃなかったら枝豆が植わっている。土地はいくらでもある、とばかりに駐車場も駐輪場も広大で、それでも余っているからなんか植えているのだ。



8月の農業園芸センターはひまわりが満開だった。9月はトマト狩りができるらしい。
そして園芸センターの中にある公民館のようなカフェではここらで取れた食材でできたジェラートが売られていた。イチジクのジェラートなんて初めてだった。



全然おしゃれ感ない見た目のこのイチジクのジェラート。絶対に加工品じゃない生のイチジク使ってるな、そのへんから取ってきたんだろうな、という味だった。もっとおしゃれに飾ろうとすればいくらでもできるのに、「そのへんにあったから入れてみた」感満載のイチジクのジェラート



この時期、スーパーや市場で青いイチジクが大量に売られている。
何にするのかと思ったら、「え?知らない?甘露煮」と驚かれた。なんでも宮城県の郷土料理なんだそうだ。「オシャレ感あるねー」と言ったら「いや、別にばあちゃんたちの作る茶色くてしわしわのおやつだよ?そんなおしゃれなもんじゃないよ」と鮭太郎は言う。


いくらだっておしゃれにできるポテンシャルあるよ?
でもアレなんだな、「そのへんに生えてたから煮た」って感じなんだろうな。
昔からそうやってこの時期のおやつにしてきたんだろうな。


昨日は台風前の海の様子をチラ見して、そのまま海辺のフルーツパークにぶらぶらと遊びに行った。
フルーツパークはJRさんが経営しているので、カフェもおしゃれげだ。
そして「梨スカッシュ」が売られていたので「梨!!」と注文した。



可愛い見た目で、完全に「生の梨のすりおろし+レモン」の味。
上に載っている梨スライスは多分普通には売れない小さい梨を利用していて、「ああ、そこの梨畑で取れたのね」というのを強く感じる。飾りのミントですら野性味がすごくて「そのへんに生えてやがったな、こいつ」と思わざるを得ない。


生の果物をそのまま使うから、加工品よりちょっと味が薄かったり、色味が薄かったりもする。
関東で売るならきっとその辺をもっと工夫して、その分お値段も上乗せして売るだろう。
そして季節限定だなんだと大騒ぎして人々が行列を作り、わざわざ都内のカフェまで食べに行ったりするんだろう。


「消費する街」にいた頃、季節限定のあれこれの商品は客寄せのためや、店のブランドイメージのためにあったけれど、生産地であるここでは「そのへんに生えてたので作ってみた」という感じなので、そのギャップにいつも不思議な気持ちになっている。
だって目的が完全に逆なんだもの。なんだかあまりにも健全なんだもの。


そこに土地があったので米を植え、果物を植え、そのへんに生えてたから、甘露煮にしたり、餅にしたりジェラートにしたりし、そのへんに落ちてた石で漬物を漬ける。
この辺の人たちって本当にすごいなあ。


そろそろこの辺の人たちは河原で芋を煮る季節だ。
そんな光景を見たらまた、「そのへんですぐ煮炊きするこの人達すごい」と思うのだろう。