そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

花のない春

震災から12年の日を仙台で迎えた。
当日、その時間にはサイレンが鳴るのかな、と思いきや、サイレンがトラウマになってしまっている人もいるとかで、サイレンは鳴らず、静かなものだった。



震災の復興ソング「花は咲く」があれから何年も歌い続けられているけれど、そして3月になったらさすがの仙台もだいぶ暖かくなっているのだけれど、驚いたことに、この街には花がない。


関東にいた頃には2月くらいになるともうあちこちの庭先で蠟梅、緋寒桜、河津桜、梅や椿が咲き始め、そこからレンギョウ沈丁花木蓮、桜、と、どんどんと花が咲き、景色に色が付いて春になっていく。


でもこの街ではずっと景色が寒々しいままだ。
おかしい、おかしい、と私はずっと焦れていた。
東北は気候が寒いから花が咲かないのか、でももうこんなに暖かいのに花が咲かないなんてことあるか。

今週になってやっと公園のサンシュユが咲いてた。


そうしてやっと気づくのだ。
この街の人は、花を植えないのだな、と。
杜の都なので、木はたくさんある。だが花がない。梅すら近所で見かけなかった。
これはあれだな、ここの人たちは「食えるものを育てることで手一杯なので、食えない花は植えない」ってことだな。
私は密かにそう結論付けた。


近所には新築の家がたくさんある。
神奈川では、新築の家に越してきた人はこぞってガーデニングをしてお庭を綺麗に飾り立てていたものだったが、こちらの人はガーデニングはしない。
やはり冬の寒さが厳しいせいだろうか。もしくは食えるものを育てているせいだろう。
そんなわけで、気温は温かいのにいつまでも驚くほど花がなく、色がなく、寒々しい春だ。


しかたないので、花を見に園芸センターに出かけた。
園芸センターはさすがに梅が咲き椿が咲き菜の花が咲き、そして菜の花が売られていた。

脂身と赤身みたいなペアの椿。


この、菜の花に本日の私は大変な衝撃を受けた。
この時期、関東でだって菜の花は売られていた。



大体、スーパーで買う菜の花はこんな感じの見た目で、見た瞬間に「辛子和えにしようかな」と考える感じだった。
けれど、私は今日初めて知ったのだ。
菜の花は、菜の花という野菜ではなくて、いろんな野菜の花である」ということを。



園芸センターで見た、これは白菜の菜の花。



園芸センターで買った、これは小松菜の菜の花。



八百屋さんで見かけた、これはアスパラの菜の花。
そして家の近所の畑には大根の菜の花が咲いていた。


調べて見たところ、「菜の花」とはアブラナ科の野菜の花の総称らしい。ブロッコリーや青梗菜も菜の花なんだそうだ。


foodslink.jp


そうだったのか…。
それにしても、食える花はこんなにもたくさんの種類をあちこちで見かけるというのに、なぜ沈丁花の一つも見つけることができないのだろうか。
生産地というのはそういうものなのだろうか。
そして都会の人間は食える花を消費するだけで、夢見がちに食えない花を育てているだけなんだろうか。


花がない、花がない、春なのに花がない!
毎日そう嘆きながらも、菜の花の種類には圧倒されている。
東北の方がずっと自然が豊かなはずなのに、花がないから自然豊かに見えない。
ああ、私はまだ夢見がちなんだろう。花で色づく春が恋しい。


そんなことを思いながら、小松菜の菜の花を煮浸しにした。