そういえば

横浜→仙台へ移住したばかり。

蟹の惑星

higata.tokyo

■蟹の惑星

 監督:村上浩康
 2019年製作/68分/日本
 放送:日本映画専門チャンネル
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すごい映画を見てしまったな、と思う。
日本映画専門チャンネルで放送していて、タイトルに惹かれて録画したのだ。最初は何かB級のメカジョーズみたいなものかと思っていたが、趣味で蟹を観察するおじいさんと蟹に関するドキュメンタリーだ。
映像がとても美しく、そこにバッハのゴルトベルグ変奏曲が静かに流れる。
退屈そうに聞こえるだろうが、蟹の生涯とおじいさんの情熱はすごくエキサイティングだ。
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多摩川の河口に干潟があるなんて知らなかった。 

多摩川河口の干潟、蟹を観察し続ける吉田唯義さん83歳。
2003年の3月に人に薦められて蟹の研究を始めた。「なにかおもしろい、長く続けられる観察できるものはないか」と言ったら「多摩川の干潟の蟹の観察をしたらどうですか?」と言われた。

薦めた人もいったいどんな人物なのだ。なかなか出てくる選択肢ではないと思う。

【15年干潟に通っているが魅力は】
知らないことがたくさん見つかるから、どうしてそういうものができるのか、なぜそういう行動をするのだという疑問が湧いてくる。
それを調べたいという欲求がでてきて、やってるうちに新しい発見があり、新しい疑問が後から後から出てきてやめるにやめられない。
いろんなことを毎日発見する。それが楽しみでやっている。

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吉田さん

以前、貝に関する講演会に参加したことがあるが、質問タイムに周囲の老人たちが「長年貝拾いをしているが貝が小さくなったのではないか」「貝殻拾いを趣味としているが」と口々に言うので驚いたことがある。
趣味を持つ老人たちの、趣味への情熱、没頭ぶり、研究熱心さには本当に敬服する。心底好きなことのある人達が目をキラキラさせながら好きなものについて語る時、また語る言葉の独特な情熱にいつも心を打たれる。

news.yahoo.co.jp

淡々とおじいさんと蟹を映すドキュメンタリーで、特に環境問題への警鐘とかお説教されるわけではない。蟹の個体数が減った考察が印象深かった。

最近蟹の数が減ってきた。
十数年で半分近くなった。塩分濃度はそんなに変わってないし水温もそんなに変わってない。
泥の性質が変わった。真っ黒な泥。酸欠状態。それでは生物は住めない。
土壌が変わった原因はわからない。東日本大震災以降、土の性質が変わった。
あの時、この辺も約30センチから50センチの津波は来た。地盤が45センチ下がった。
地盤が下がったところに津波が来たことで、表面の泥がごっそり削られたのではないかと思っている。

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あれこれの説明を聞くと蟹のマシン感がハンパない。

  • 陸上でエラ呼吸できるように甲羅に水を流す循環システム搭載。
  • 砂中の珪藻を食べるため、砂や砂利を吐き出すろ過装置を体内に搭載。本体の大きさによって装置の設置箇所が異なる。大きい個体は下部に配置、小さい個体は上部に配置。
  • ハサミの先の爪の部分に食物がどうかを見分けるセンサー搭載
  • 目が運動機能を司る一部分を担っているため目を塞ぐと起動しない。
  • カニが干潟の泥をかき回すことによって耕す状態となり、酸素が取り込まれ水質が改善される環境配慮設計

こんなのSHARPあたりから販売されてそう。

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満月の夜は蟹の脱皮数が多くなるのだそうだ。そしてチゴガニのメスたちは8月の満月の夜に、卵から孵りつつある幼生を海に離すために水辺に集まるのだそうだ。潮の満ち引きとの関係ではないかと吉田さんが言っていたが不思議なことだ。

神これを創り給へり蟹歩む   山口誓子

何度もこの句を思い返した。