悪意の物語
以前に「人間風車」という芝居を見たことがある。
絵本作家を目指す男性が公園で子どもたちに自分の作った物語を読み聞かせする。
作家は自分の人生がうまくいかなくなると物語の中に恨みつらみを混ぜ込んで、物語の中で相手に復讐をするようになる。
そして、彼の物語に心酔していた知的障害のある男の子が、彼の物語を現実にしようと、相手を殺害していくのだ。
大昔の映画「カリガリ博士」もそんな内容だった。
政治家に対して文句を言うことが「政治を考えること」のように思っている人が好きじゃなかった。誰が総理大臣になろうと、どこが政権を取ろうと常に文句を言い続けるのだ。
そして、憎々しげに言う。「安倍死ね」「菅直人死ね」「岸田死ね」
コロナ前、年末の居酒屋から「安倍死ね!」と言いながらおじいさんが出てきたのを今でも覚えている。
あのおじいさんは今、満足だろうか。
自分の恨みつらみを誰かが晴らしてくれて、それでいい気持なんだろうか。
総理大臣が死んだら、政治が良くなるとでも言うんだろうか。
自民党は好きじゃないし、安倍さんを支持もしていない。でも選挙で選ばれた中から総理大臣になった人で、まあ、それなりに頑張ってもいたんだろう。いろんな問題も疑惑もあった。
だからって。
だからってこんなことがあっさりと起こっていいわけがないんだ。
メディアが政治家や芸能人を面白がっておもちゃにして叩いて馬鹿にして、そういう風潮が「ああ、こいつらには何をしてもいいんだな」「みんなアイツが嫌いなんだ、なら自分が」と思わせる土壌にもなっているんじゃないのか。
人間風車のあの物語のように。
そんなことを考えた。