燗をつける
年末に、すてきな文章を読んだ。
若い人には通じない…日本から「お燗」という文化が消えつつある「もったいなさ」
若い人が物知らずでダメだ、とかそういう内容じゃない。
お酒の楽しみ方を教えてくれる文章だった。
- 昭和の中ごろまでは、日本酒は特級酒、一級酒、二級酒とランクがついていて、そのころの日本酒は、ふつう「燗をつけて」飲むものだった。よほど急いで飲みたいとき以外は、燗をつけて酒を飲む。そういう文化があった。
- 本来、「燗」と「熱燗」は違う。熱燗は、ふーふーとちょっと息を吹きかけたくなるくらいの熱さであり、燗はすっと飲めるくらいの熱さである。その下が「ぬる燗」で、これは、すこーしだけあたためた、という、かなりぬるめのものである。
- 「燗」という言葉がなくなり、「熱燗―ぬる燗」の二択になっているのだ。
- 落語の古い世界では、「酒を温めて飲む人」がふつうの人であり、「温めないで(冷やで)飲む人」は、有り体に言うなら、お酒にいやしい人、として描かれているのだ。いうなれば、酒を楽しむ余裕はなく、ただただ酔うために飲んでいる人である。ガスコンロも電気コンロもない時代、炭火をいこして酒を温めるしかないのだが、それでも必ず温めて飲むのは、それがひとつの文化だということだろう。
- 夏こそ「ぬる燗」がいいですね。夏のとんかつ屋でぬる燗を飲むのが私にとっては至福の時間であります。
- なかなか厳しい寒さがつづくなか、日本酒をちょっと温めて飲むと、ほこほこしてきて、身体も気持ちも楽しくなる。あったかい酒だと、そんなに量を飲まなくても満足するってのもいいところだ。
- あったかい日本酒は、電子レンジですぐにできます。ふつうの湯呑みのそこそこ量で40秒ってところですね。
そうだったのか…。
日本酒というのはひと手間かけて温めて飲むお酒だったのか。
しみじみと勉強になった。そして是非試してみたくなって、ここ最近では毎晩燗をつけている。
これがすごく良いのだ。
晩御飯を作るにも、日本酒に合うおかずを…などと考えたりする。そうしてすごく大人になったような気持ちになっている。年齢だけは相当大人だけれども。
時代劇を見ていてもお酒のシーンが気にかかるようになってきた。
「酒はまだか」なんて言うのもお燗してるからなんだなあ、とか、寒い日に蕎麦屋に入って「まずは一本つけてもらおうか」と言う当たり前みたいな台詞に実感を持つことができたり、酒の肴が気になったりする。
これは池波正太郎なんて読んだら更にずぶずぶとハマっていきそうだ。
まだちょっと肌寒い春先に、燗酒を飲むのも素敵だろうな。
記事にあったように夏のぬる燗ととんかつもすごくいい。
ああ、いいこと教えてもらっちゃった。楽しみが増えた。