いつでも月を

土曜日から仙台に旅行に行った。
猫が家に来てからずっと旅行に行っていなかったので4年ぶりだ。
東京駅の新幹線乗り場へ来ることさえ、猫を迎えに来た日以来だな、としみじみする。
だから新幹線に乗っている間、音楽を聞いたりスマホをいじるのももったいなくて、夢中で1時間半の旅の景色を味わった。


仙台の友人・鮭太郎は、かつては関東に住んでいた、昔の職場の同僚だ。そして彼女が仙台に帰ってからも付き合いが続いている。
我が家の二匹の猫たちも仙台生まれで、彼女が保護した猫を貰い受けたのだ。

オレたちの育ての母!


20代からの友人なので、思い出はものすごくたくさんある。昨日は温泉に連れて行ってもらい、温泉を出たり入ったりしながらいろいろな思い出話しをした。
「思い返せば私達、ずいぶん一緒に温泉に行っているね、そしてずいぶん一緒に月を見上げているね。」


土曜日は大きくて丸い月が出ていた。満月にはまだ少し早くて十三夜とのこと。
そんな月を露天風呂に入りながら、温泉の中庭で休憩しながら、見上げた。
そういえば鮭太郎と出会った職場を13年前に辞めたとき、次の仕事がなかなか見つからなくて疲れて悲しくなり、新幹線に飛び乗って仙台に来たことがあった。鮭太郎は気晴らしにと、車で山形に連れて行ってくれた。


あの帰り道、高速道路の途中で目の前に8月の満月が大きく光っていた。
あの月をすごくよく覚えている。
それから一ヶ月後の中秋の名月のときも妙に寂しくなってしまって、月を見上げながら鮭太郎と電話で話をしたんだった。
「先月の今頃は山形からの帰り道で一緒に満月見たね」って。

天文台の芝生に寝そべって一緒に星を見たこともある。


少しずつ暮れていく空に丸く光る月を見上げて、あの時よりも年をとって、あの時よりも落ち着いた気持ちで、「私はまた仕事を辞めて、そしてまたあなたと月を見てるわ」と思い出話しをして笑いあった。



鮭太郎が先にお風呂を上がったあとも、私はまだ「不思議だなあ」と思いながら月を見ていた。
一緒に月を見たこと、月食を見たこと、そういう思い出はずっとくっきりと胸の中に残っている。どうして彼女といると月を見ることが多いんだろう。どんどん「あの時も月を見たね」「あの時に行った温泉は」という思い出が積み重なっていく。


温泉を出てホテルに着いたら、なんとテレビで「E.T.」が放送されていて、二人で「懐かしい、懐かしい」と言いながら最後まで見た。


満月をバックに自転車が飛ぶあのシーン。ここでも彼女と月を見ている。
そしてまた「絶対、そのうち『あの時ET見たよね』って話すんだろうね」と二人で笑った。それはもう確定路線でありありと目に浮かぶ光景だ。
そんな未来を「当たり前に絶対起こりうる事」として話せるのって、考えてみたらすごいことだな、と思う。
この不確かな世の中で。


そして、お月様みたいな萩の月を買って帰ってきた。
お天気も奇跡的に晴れて、本当に楽しくて幸せな二日間だった。また行きたい。